こんにちは! ドーナツは朝食派、N.Y からkeikoです。
今回はブルックリンのGreenpointにある【DASHI OKUME】さんにご招待いただき、足を運ぶ機会がありましたのでその様子をお届けしますね!
「出汁の専門店が、アメリカで?それもブルックリンで…?」という好奇心と少しの不安を抱えつつ訪れてみると、そこには想像を遥かに超える“だし熱”が広がっていました。

50Norman外観
築地発、150年の老舗が挑む海外市場
DASHI OKUMEは、明治四年創業の築地の老舗仲卸「尾粂(おくめ)」さんが手がける、海外初の直営店。オープンしたのは2022年秋、今や“日本の食文化発信地”として注目を集める複合施設「50 Norman」内。この施設内には東京で有名なライフスタイルショップのSIBONEさんやレストランHOUSEさんが入っていて、ハイエンドな日本の文化を発信しています。
初めからブレンドして売られている定番のだしパックに加え、特筆すべきは世界初・特許取得済みのオーダーメイド出汁パック!こちらは30種以上の素材から好きな組み合わせを選び、店内の加工場で粉砕・充填・パッケージ化。その場で“名前付き”のラベルを貼ってくれる、なんとも特別感あふれる体験です。

使用する乾物を決めたら、奥の工房で粉砕してパッキングしてくれる
五感を刺激する「だしの香り」と驚きの人気ぶり
正直なところ、だし文化に馴染みのある日本人でさえ素材の違いや配合の妙はまだまだ未知の世界。そんな繊細な商品が、本当にアメリカ人にウケるのだろうか…?そんな疑念も、訪問初日にあっさり吹き飛びました。
オープンと同時に、次々とお客様が吸い込まれるように店内へ。耳を澄ませると、通行人の会話からも「最近よく人入ってるよね」「“ダシ”って知ってる?」「あぁ、broth(出汁)のことね!」と、すでに“DASHI”が生活に浸透している様子。驚きとともに、その広がりの速さに鳥肌が立ちました。
出汁は「香るコーヒー豆」のように売られていた

種類豊富な魚介、昆布、野菜の乾物を組み合わせる
棚には、毎朝粉砕して仕上げたての出汁パックがずらり。それも全てがその日のうちに完売するというから圧巻です。どこかコーヒーショップに近い感覚で、香りを楽しみながら選ぶ出汁体験。実際、お客さまには“自家焙煎豆をこよなく愛していそうな”インテリ風男性や、お洒落な若いご夫婦が多く見られました(あくまで筆者の偏見です…笑)。
因みに、最もリーズナブルな【スタンダード】という商品で$22/15袋入(約3,200円)と価格は決して安くない。それでも、素材や体験の価値に見合った金額が、しっかりと支持されている印象です。その他にも、ビーガン向けに数種類の野菜だけで配合した【ベジタブルブロス】という商品も用意するなど、多様性の文化に根ざすよう柔軟で緻密なマーケティングがなされていました。
私の“マイだし”デビュー

ドライトマト、セロリ、イカ、ホタテ、きのこ類…

魚介だけでもノドグロ、カマス、煮干し、あご などたくさん!
せっかくなので私もチャレンジ!九州育ちの私にはあまり馴染みのないノドグロをベースに、鰹と昆布、さらに冒険心で干し貝柱も加えてみました。仕上がったパックは、自分の名前が入った特製ラベル付き。とても贅沢な特別ブレンドに何とも愛着が湧き、使う前からすでに「大切に味わいたい」という気持ちに。

名前入りのオリジナルだしの特別感に気持ちも高揚!
イートインで出会う“日本の朝ごはん”
店内には尾粂さん自慢の干物や西京漬を使った定食も楽しめるイートインスペースがあり、まるで日本の朝の食卓のような光景が広がっていました。ここはただの食料品店ではなく、“五感でだし文化を学ぶ場”でもあるのです。

シンプルモダンなカウンターの奥には和食器が並ぶ
出汁が「ライフスタイル」になるとき
ブルックリンの若者たちは今、健康的でミニマルな暮らしに価値を見出しつつあります。DASHI OKUMEのような店は、単なるグルメ体験を超えて、「日々の料理を丁寧に整える行為そのもの」を提供しているように思いました。出汁はもはや、ただの調味料ではなく、暮らしそのものを豊かにする“文化の一滴”なのです。
おわりに
DASHI OKUMEの挑戦はまだ始まったばかり。けれど、その第一歩は確実に ブルックリンの暮らしに根を張り始めています。
ニューヨークの地で、日本のだしが ここまで香り高く息づいていることに心から感動した一日でした。
すこし大袈裟だけれど、混迷する世界情勢のなかで こうした人と人との文化理解の積み重ねが 異国への想いや愛情の土壌となることに 静かな希望を抱かずにはいられません。
See you next time !!